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AIエージェントに広告運用を任せる
担当者の退職から始まった、Amazon広告の内製化
現在、当社のAmazon広告は、AIエージェントが運用しています。
運用成績は、人間の担当者がいた頃と比べて落ちていません。
むしろ、以前より向上しました。
こう書くと、
「AIに広告運用を丸投げしたら、勝手に成果を出してくれた」
という話に聞こえるかもしれません。
しかし、実際はまったく違います。
AIに広告運用を任せられたのは、過去に人間がきちんと運用し、試行錯誤した履歴が残っていたからです。
AIエージェントがゼロから正解を生み出したのではありません。
人間が積み上げてきた運用を分析し、判断基準を言語化し、それを引き継いだ。
これが実態です。
きっかけは、担当スタッフの退職
もともと当社には、Amazon店を担当するスタッフがいました。
Amazon側の担当者と定期的に打ち合わせをしながら、広告キャンペーンの調整や予算配分、キーワードの追加・除外などを行っていました。
ところが、そのスタッフが退職することになりました。
- 代わりの人材を採用し、育てるのか。
- 広告運用の代行会社に任せるのか。
- 社内の別のスタッフに引き継ぐのか。
いくつかの選択肢がありましたが、最終的に私たちは、AIエージェントに担当させることにしました。
ただし、最初からAIだけで運用を始めたわけではありません。
実際には、次のような段階を踏んでいます。
過去の広告運用を、すべて分析させる
最初に行ったのは、これまでの広告運用履歴と実績データを、AIエージェントに分析させることでした。
- どのキャンペーンが、どの時期に伸びたのか。
- どのキーワードが成果につながり、どのキーワードが停止されたのか。
- 予算は、どの商品やキャンペーンに振り分けられてきたのか。
- 入札額は、どのような理由で上げ下げされていたのか。
退職する担当者の頭の中を、そのまま取り出すことはできません。
しかし、担当者が行ってきた操作の履歴は残っています。
広告運用の画面には、人間が過去に行った判断の痕跡が大量に残されています。
まずは、その痕跡を徹底的に読ませました。
ここで重要なのは、単に数字を集計させることではありません。
「成果の良かった広告を探す」
だけではなく、
「なぜ、この人はこのタイミングで、この操作をしたのか」
という仮説まで考えさせることです。
AIに引き継がせるべきものは、操作そのものではなく、その裏側にある判断だからです。
原価と利益を加え、判断基準をつくる
次に、自社の商品マスタから原価情報を渡しました。
広告運用というと、ROASやCPA、クリック単価、コンバージョン率といった広告指標ばかりが注目されます。
もちろん、それらも重要です。
しかし、本当に見るべきなのは、広告を使った結果、会社にいくら利益が残ったかです。
例えば、ROASが高い商品であっても、原価率が高ければ、実際にはほとんど利益が残っていないことがあります。
逆に、ROASだけを見ると少し悪く見えても、利益率が高いため、十分に広告費をかけられる商品もあります。
そこで、商品ごとに次のような内容を整理しました。
- 広告経由で利益を生んでいる商品
- 売上はあるが、利益がほとんど残っていない商品
- 新規顧客の獲得を目的として広告を続ける商品
- 利益率が高く、広告費を増やせる商品
- 季節や時期によって広告効率が変わる商品
- 商品ごとに許容できる広告費の上限
こうした内容を、広告運用のガイドラインとしてまとめました。
AIにとって、数字を見ること自体は難しくありません。
難しいのは、
「どの数字を優先するのか」
「何をもって成功と判断するのか」
という、会社独自の基準です。
だからこそ、AIエージェントを動かす前に、自社としての判断基準を決めておく必要があります。
Amazon側の担当者に、方針をレビューしてもらう
ここが、かなり重要な工程でした。
AIが作成した運用方針を、そのまま採用したわけではありません。
Amazon側の担当者にも確認してもらい、指摘を受け、その内容を修正しました。
これを何度か繰り返しています。
AIが過去のデータから導き出した方針は、あくまで自社のデータだけを見た正しさです。
当然ながら、そこには限界があります。
Amazon側の担当者は、媒体の仕組みや新しい機能、他社の運用事例、市場全体の動きを把握しています。
自社のデータだけを見ていると、
「この広告は止めたほうがよい」
と判断してしまうところを、
「この商品は今後伸びる可能性があるため、もう少しデータを集めたほうがよい」
といった別の視点が入ることがあります。
AIの分析に、外部の専門家の知見を加える。
この工程によって、運用方針の精度は明確に上がりました。
AIが出した答えを、人間が承認するだけではありません。
AIと専門家の意見を往復させながら、判断基準そのものを育てていきました。
実際に走らせながら、運用方針を固めていく
修正した方針をもとに、AIエージェントによる運用を開始しました。
しかし、ここでも最初から完全自動にしたわけではありません。
AIが出した判断と、実際の広告パフォーマンスを確認しながら、基本方針を少しずつ調整していきました。
広告は、同じ商品であっても、時期によって成果が変わります。
競合の出稿状況も変わります。
Amazon側の仕様や広告メニューも変化します。
一度ガイドラインを作ったからといって、その方針が永遠に正しいわけではありません。
運用しながら、判断基準を修正していく必要があります。
これは、人間の担当者でも同じです。
広告運用は、完成したマニュアルを渡せば終わる仕事ではありません。
結果を見ながら、仮説を立て、調整を続ける仕事です。
現在は、この仮説と調整の役割を、AIエージェントが担当しています。
AIエージェントへの引き継ぎが成功した理由
今回の引き継ぎが成立した最大の理由は、過去にうまく運用できていた期間があったことです。
人間の担当者が広告を運用し、成果を出し、その履歴が残っていました。
つまり、AIが学習できる「正解に近いデータ」が存在していたのです。
AIエージェントは、何もないところから、会社独自の広告運用を完成させたわけではありません。
すでに存在していた優れた運用を分析し、再現し、改善していったのです。
ここは、AIエージェントを考えるうえで、とても重要な部分です。
AIは魔法ではありません。
良い教材を渡せば、良い担当者に育ちやすい。
悪い教材を渡せば、悪い仕事を覚えます。
何も教材がなければ、試行錯誤から始めるしかありません。
これは、人間を育てる場合とほとんど同じです。
運用実績がない会社は、どうすればよいのか
では、そもそも広告運用の実績がない会社は、どうすればよいのでしょうか。
ゼロからAIエージェントに試行錯誤させる方法もあります。
しかし、正直なところ、かなり大変です。
広告費を使いながら、判断基準そのものを作っていくことになるため、失敗する可能性も高くなります。
そこで、ひとつの方法として考えられるのが、
最初は外部のプロに運用してもらい、その運用をAIエージェントに引き継ぐ
というやり方です。
一定期間、広告運用を代行会社に任せる。
成果が出る運用方法が確立されたら、その履歴と判断基準をAIに学習させる。
こうすれば、ゼロから育てるのではなく、すでに成果の出ている状態をスタート地点にできます。
外部の専門家を、単なる作業の委託先ではなく、AIエージェントの教育担当として利用するわけです。
ただし、この方法を取る場合には、いくつか絶対に外してはいけない条件があります。
広告アカウントは、必ず自社名義にする
これは最重要です。
代行会社の名義で広告アカウントを作られてしまうと、契約を終了したときに、広告運用の履歴まで失う可能性があります。
それでは、AIに学習させるための教材が残りません。
広告アカウントは、必ず自社名義で保有する。
代行会社には、代理店アカウントからリンクしてもらい、運用権限だけを渡す。
この形にしておく必要があります。
運用のノウハウ以前に、データを自社に残せる契約になっているかどうか。
ここを最初に確認すべきです。
月次レポートに「変更内容」と「変更理由」を残してもらう
広告運用の代行会社から提出される月次レポートには、成果の数字が並んでいることが多いです。
しかし、
「今月はCPAが改善しました」
「売上が前月比で増加しました」
といった結果だけのレポートでは、AIエージェントの教材としては不十分です。
必要なのは、
何を変更し、なぜ変更したのか
という記録です。
例えば、次のような内容です。
「◯◯というキーワードを除外した。コンバージョンがゼロだったことに加え、検索クエリを確認すると、商品購入ではなく商品の修理業者を探しているユーザーが多かったため」
このレベルまで理由が残っていれば、AIはその判断を別の商品や別のキーワードにも応用できます。
広告管理画面には、操作の結果は残ります。
しかし、判断した理由は、自動的には残りません。
そして、AIエージェントに最も引き継ぎたいのは、操作履歴ではなく、判断理由のほうです。
この要求は、代行会社との契約時に伝えておく必要があります。
運用が始まってから、
「今後は、すべての変更理由も細かく書いてください」
と依頼しても、対応してもらえない可能性があります。
月次報告の形式まで含めて、最初に契約条件へ入れておくべきです。
定例ミーティングは、すべて録音する
個人的には、これが一番効果があると考えています。
レポートには書かれない判断が、定例ミーティングの会話には大量に出てくるからです。
例えば、
- 「この広告は、もう少し様子を見ます」
- 「この時期は毎年、コンバージョン率が落ちます」
- 「競合が一時的に入札を強めているようです」
- 「数字は悪いですが、新商品なので認知目的で残しています」
こうした言葉には、実際の広告運用で使われている判断基準が含まれています。
しかし、会話だけで終われば、その知識は担当者の頭の中に残るだけです。
当社では、打ち合わせをPLAUDで録音し、文字起こしした内容を整理して、ナレッジとして蓄積しています。
会話の記録をAIに読み込ませれば、表面的な操作履歴だけでは見えなかった判断理由を学習できます。
仕組みを一度作ってしまえば、打ち合わせをするたびに、AIエージェントの教材が自動的に増えていきます。
代行会社から見れば、ノウハウを持っていかれる話ではないか
代行会社からすれば、自分たちの運用をAIに学習され、最終的に契約を終了される可能性があるわけです。
歓迎される話ではないでしょう。
だからといって、私は最初から、
「将来は御社の運用をAIに学習させて、内製化する予定です」
と伝える必要はないと考えています。
こちらが、契約上認められた範囲で運用履歴や報告内容を保存し、自社の業務改善に利用することは、特別なことではありません。
代行会社に依頼しているのは、単に広告管理画面を操作してもらうことだけではありません。
運用結果の報告を受け、施策の内容を把握し、自社の広告事業を管理するところまで含めて依頼しています。
そのために必要な情報を、自社に残しておくのは当然です。
重要なのは、相手に将来の内製化計画を宣言することではありません。
最初から、必要な情報が残る契約と運用方法にしておくことです。
- 広告アカウントは自社名義にする。
- 変更内容と変更理由を報告してもらう。
- 定例ミーティングを記録する。
- 広告データを定期的に保存する。
- 担当者とのやり取りも、会社の共有資産として残す。
こうした条件を、通常の業務管理や報告品質の問題として整えておけばよいのです。
「将来AIに学習させるので、詳しく教えてください」
と伝えれば、相手が警戒するのは当然です。
説明が抽象的になったり、重要な判断を口頭で済まされたり、開示される情報が減ったりする可能性もあります。
こちらから、わざわざ手の内を明かして、不利な状況をつくる必要はありません。
ただし、相手の機密資料や、契約上利用を禁じられている情報まで無断でAIに読み込ませてよい、という意味ではありません。
利用できるのは、あくまで自社の広告アカウントに蓄積されたデータ、自社向けに提出された報告書、自社が参加した打ち合わせの記録など、契約上適切に扱える情報です。
守るべき契約は守る。
一方で、自社の業務から生まれた情報は、きちんと自社に蓄積する。
その線引きをしたうえで、AIエージェントの教材として活用すればよいと考えています。
代行会社を選ぶ際にも、
「AIへの引き継ぎに協力してくれるか」
と正面から尋ねる必要はありません。
見るべきなのは、もっと基本的な部分です。
- 運用内容を説明してくれるか。
- 変更理由を言語化してくれるか。
- 広告アカウントやデータの所有権が自社にあるか。
- 解約後も履歴や成果物が手元に残るか。
- 担当者個人ではなく、会社として記録を残しているか。
こうした点が整っている会社であれば、結果としてAIエージェントへの引き継ぎもしやすくなります。
反対に、
- 「詳しい運用内容は企業秘密です」
- 「結果だけ報告します」
- 「広告アカウントはこちらで管理します」
という会社であれば、契約中は成果が出ても、解約した瞬間に何も残りません。
それでは、会社にノウハウが蓄積されないまま、代行会社へ依存し続けることになります。
AIエージェントへの引き継ぎ以前に、経営として好ましい状態ではありません。
大切なのは、代行会社にすべての意図を明かすことではなく、外注によって生まれた知識やデータが、自社の資産として残る仕組みをつくることです。
外注は、作業を買うものではなくなる
これまでの外注は、作業を代わりにしてもらうためのものでした。
- 広告運用を代行してもらう。
- 経理処理をしてもらう。
- 問い合わせ対応をしてもらう。
契約期間中だけ、人の手を借りる。
しかし、AIエージェントが登場したことで、外注の意味は変わっていきます。
これからは、外部の専門家に仕事をしてもらいながら、その仕事のやり方を自社のAIエージェントに学習させることができます。
つまり外注は、
作業を買うものから、教材を買うものへ変わる
ということです。
優れた専門家の仕事を自社に通し、データと判断基準を残し、それをAIエージェントへ引き継ぐ。
そう考えると、外注費は単なるコストではありません。
自社のAIエージェントを育てるための、教育投資になります。
AIエージェントは、ゼロから育てなくてもよい
AIエージェントは、必ずしも自社だけでゼロから育てる必要はありません。
社内に優れた担当者がいるなら、その人の運用履歴や判断を学習させればよい。
社内にノウハウがないなら、外部の専門家から一度借りてくればよい。
大切なのは、誰が教材を作ったかではありません。
どのようなデータと判断基準を、AIエージェントに渡せるかです。
そして、その教材が自社に残る契約や仕組みを、最初から作っておくことです。
AIエージェントに仕事を任せるというと、AIの性能ばかりが注目されます。
しかし、実際に成果を分けるのは、AIそのものよりも、何を引き継がせるかです。
- 良い仕事を残す。
- 判断理由を残す。
- 会話を残す。
- データを自社に残す。
それさえできれば、外部のプロの知識も、退職する担当者の経験も、自社のAIエージェントへ引き継ぐことができます。
今回、担当スタッフの退職は、当社にとって困った出来事でした。
しかし結果として、それがAIエージェントによる広告運用へ移行するきっかけになりました。
人が辞めるたびに、知識が会社から消えていく。
そんな状態を、これまで多くの会社が当たり前として受け入れてきました。
これからは違います。
人が辞めても、その人が積み上げた仕事まで失う必要はありません。
仕事の履歴と判断を残しておけば、AIエージェントが、その続きを担当できます。
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ボタンについては、お名前を取っていません。同じ方が二重に数えられないようにするためだけに記録が残ります。