読み物
AIの最新情報を
追うのをやめた。
「うちに必要か」の判断まで、AIに任せる
AIの世界は、進化が速すぎます。
昨日までClaudeを使って社内の仕組みを作っていたのに、
「今度のCodexがすごい」
「新しいモデルなら、こんなことまでできる」
「これからは、今までの作り方が不要になる」
そんな情報が流れてくると、どうしても試したくなります。
少し触ってみると、今度はClaudeから新しい機能が出る。
するとまた、
「やっぱりClaudeの方がいいのではないか」
と迷い始める。
これを繰り返していると、AIを使って仕事を減らしているはずなのに、AIを比較する仕事ばかりが増えていきます。
私は、あえて最新情報を追わなかった
私はこれまで、AIとやり取りしながら、社内にさまざまな仕組みを構築してきました。
プログラムの知識がほとんどなくても、AIに相談し、設計させ、作らせ、直させることで、かなりのところまで進められるようになりました。
だからこそ、新しいAIの情報には影響されやすくなります。
新しいものが出るたびに、
「今作っている仕組みは、もう古いのではないか」
「こちらに乗り換えた方がいいのではないか」
「作り直した方が、もっと良くなるのではないか」
と考えてしまうからです。
しかし、毎回それに反応していたら、いつまでたっても仕組みが完成しません。
新しいAIに乗り換えるコストは、月額料金だけではありません。
動作確認、設定変更、指示書の書き直し、運用ルールの変更、トラブル対応、元に戻すための準備。
実際には、かなり大きな手間がかかります。
そこで私は、積極的にAIの最新情報を集めないようにしていました。
知らなければ、迷わない。
知らなければ、今やっていることに集中できる。
一見すると、合理的な方法です。
しかし、情報を見ないだけでは守れない
問題は、AIの進化があまりにも速いことです。
新しい情報をまったく見なければ、振り回されることはありません。
しかしその代わりに、世の中の変化から取り残されます。
数か月前には必要だった複雑な仕組みが、今では標準機能だけで実現できるかもしれない。
以前は人間が確認しなければならなかった作業が、今では安全に自動化できるかもしれない。
逆に、以前は問題なく使えていた方法が、サービス側の仕様変更によって危険になっているかもしれない。
仕組みが正常に動いているからといって、最適な状態とは限りません。
むしろ怖いのは、壊れていないことです。
壊れていれば誰かが気づきます。
ところが、古いやり方のまま一応動いている仕組みは、誰にも気づかれないまま、毎日少しずつ余計な時間とコストを使い続けます。
つまり、
最新情報に振り回されたくないから情報を見ない。
この方法では、迷いは減っても、会社の仕組みが古くなる問題は解決しませんでした。
そこで、判断そのものをAIに任せることにした
私が考えたのは、単にAIにニュースを集めさせる仕組みではありません。
情報収集だけを自動化しても、毎日大量の要約が送られてきたら、結局それを読むのは人間です。
これでは、情報収集の作業が「大量のAI要約を読む作業」に変わっただけです。
そこで、情報を集めるだけでなく、
その情報が自社に必要かどうかを判断するところまで、AIに任せることにしました。
AIは、新しいモデル、機能追加、仕様変更、サービス終了、料金変更、活用事例などの情報を集めます。
ただし、話題になっているという理由だけでは私に知らせません。
社内で現在使っている仕組み、進行中のプロジェクト、困っていること、今後実現したいことと照らし合わせます。
そのうえで、
- 今使っている仕組みに影響があるか
- 未解決の問題を解決できるか
- 作業時間やコストを大きく減らせるか
- 今の仕組みを、より単純に作り直せるか
- 放置すると危険な変更か
- 導入する手間と効果が見合うか
を判断させます。
その結果、会社に関係がなければ、そのまま保管して終わりです。
どれだけ世間で話題になっていても、うちに必要がなければ提案には上げません。
反対に、世間ではほとんど話題になっていなくても、今使っている仕組みの不具合や仕様変更に関係するなら、優先して知らせます。
話題性の大きさと、会社にとっての重要度は別です。
ここをAIに仕分けさせることにしました。
「新しいから乗り換える」ではなく、「効果があるから変える」
新しいAIが出るたびに試す必要はありません。
大切なのは、新しいかどうかではなく、今の会社にとって意味があるかどうかです。
例えば、非常に高性能な新モデルが登場したとしても、現在の業務が問題なく動いていて、切り替えても大きな改善がないのであれば、急いで導入する必要はありません。
一方で、現在使っているサービスの認証方法が変更され、自動処理が止まる可能性があるなら、派手なニュースでなくてもすぐに対応する必要があります。
また、以前は複雑なプログラムを組まなければできなかった処理が、新しい標準機能だけで実現できるようになったなら、見直す価値があります。
AIには、情報を知らせるだけでなく、次の形まで整理させます。
- 「何が変わったのか」
- 「うちのどの仕組みに関係するのか」
- 「導入すると何が良くなるのか」
- 「変更にどの程度の手間がかかるのか」
- 「失敗した場合に元へ戻せるのか」
- 「今やるべきか、待つべきか」
人間がゼロから調べて考えるのではありません。
AIが比較・整理した提案に対して、私は最後に、
採用、保留、却下
の判断をするだけです。
※画面の「高市」「三原」「田中」「稲田」「片山」「野田」は、AIエージェントに付けている名前です (高市=マネージャー、三原=楽天担当、田中=本店Shopify担当、稲田=情報システム担当、 片山=受注処理担当、野田=発注担当)。いずれも普段は Opus 5 で動いています。
一番危険だったのは、新しい情報を知らないことではなかった
この仕組みを考えていて分かったのは、外部の最新情報以上に、社内にある「古くなった前提」が危険だということです。
AIを使って仕組みを作るときは、その時点の条件に合わせて設計します。
例えば、
- 「この作業はAIにはできない」
- 「ここは人間が確認しなければならない」
- 「このサービスにはAPIがない」
- 「この方法では自動ログインできない」
- 「このモデルでは精度が足りない」
といった前提です。
その前提に合わせて、別のプログラムを作ったり、人間の確認工程を入れたり、複雑な回避策を組んだりします。
しかし、AIやサービスの仕様は変わります。
当時は正しかった前提が、数か月後には正しくなくなっていることがあります。
ところが、仕組みだけは当時の形のまま残ります。
誰も「なぜ、この複雑な工程を入れたのか」を覚えていなければ、必要のなくなった作業を延々と続けることになります。
作った仕組みは、コードから古くなるのではありません。前提から古くなります。
そこで外部の最新情報だけでなく、社内の仕組みについても、
「この設計を選んだ理由は、今も有効か」
をAIに定期的に確認させるようにしました。
新しいものを追加することだけが改善ではありません。
昔の制約がなくなったことで、今ある仕組みを削れることもあります。
AIの進化によって、本当に得られる大きな効果は、新機能を増やすことではなく、今まで必要だった複雑な仕組みを捨てられることなのかもしれません。
AIに任せるが、勝手には変えさせない
ここは重要です。
AIが「導入した方がいい」と判断したからといって、そのまま本番の仕組みを変更させるわけではありません。
情報収集、比較、一次判断、提案まではAIに任せます。
しかし、実際に変更するかどうかは人間が決めます。
なぜなら、新しい技術が優れていることと、今すぐ会社に導入すべきことは同じではないからです。
技術的には良くても、繁忙期に変更すれば現場が混乱するかもしれません。
作業時間は減っても、維持管理が複雑になるかもしれません。
一部の業務では良くても、別の仕組みに悪影響を与えるかもしれません。
だから、AIには効果だけでなく、工数、リスク、継続性、チームへの負担、失敗したときに元へ戻せるかまで考えさせます。
そして最後は、人間が判断します。
AIに任せるのは、経営判断を放棄するためではありません。
経営者が判断する価値のある情報だけに、注意を集中するためです。
私は、最新情報を追わない
今後も私は、AIのニュースを一日中追いかけるつもりはありません。
新しいモデルが出るたびに、自分で性能を比較するつもりもありません。
ただし、情報を無視するわけでもありません。
AIが情報を集め、自社の状況と照らし合わせ、必要なものだけを提案する。
私は、その提案を見て判断する。
つまり、情報収集をやめたのではありません。
自分が、すべての情報に直接さらされるのをやめたのです。
これなら、新しい情報に振り回されることはありません。
同時に、古い仕組みにしがみつき続けることもありません。
「Claudeがすごい」
「Codexがすごい」
「次はこれが来る」
そうした話題を追いかけるのではなく、
「それは、うちの何を良くするのか」
だけを見る。
AI時代に必要なのは、すべての最新情報を知る能力ではありません。
必要な変化だけが、必要なタイミングで届く仕組みを作ることです。
社内の自動化が増えてきた会社ほど、次に作るべきなのは新しい自動化ではなく、
今ある自動化が古くなっていないかを監視する自動化
なのかもしれません。
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