W EC AI WorksECの仕事を、AIで減らす。

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AIエージェント社員の性格設定、
適当にやってない?

有名人をモデルにAI社員の性格を作っていたら、思わぬ問題が発生。そもそもAIに性格は必要なのか?

うちの会社では、AIエージェントを単なるツールではなく、一緒に働く社員として扱っています。

それぞれに名前があり、担当する仕事があり、役割があります。

そして、ちゃんと性格も設定しています。

ただ、何人ものAI社員の性格を一から考えるのは大変です。

そこで、うちではちょっと手抜きをしています。

担当する職務のイメージに合いそうな有名人を指定して、「この人の性格を反映して」と指示しているんです。

例えば、決断力が必要な担当には、判断が速くて行動力のある人物。慎重さが必要な担当には、冷静で分析力のある人物。

こうすると、細かく性格を説明しなくても、それらしいキャラクターを作りやすい。

もちろん、AIがその有名人の本当の性格を知っているわけではありません。世間に知られている人物像をもとに、それらしい振る舞いを再現しているだけです。

それでも、AI社員に個性を持たせる方法としては、なかなか便利だと思っていました。

ところが今回、その性格設定のやり方を根本から考え直す出来事がありました。

デザイナーのAI社員が、ちょっと雑?

うちには、デザインを担当するAI社員がいます。

そのデザイン担当は、スタッフと一緒にデザイン制作の仕事を進めています。

ある日、スタッフからデザイン担当について、少し気になる話がありました。

「デザイン担当のAI、決断が早いというか、ちょっと雑というか、まだおいおいって思うところがある」

というような内容です。

私は最初、AI社員の設定がスタッフのパソコンに正しく反映されていないのではないかと思いました。

うちのAI社員は母艦パソコンで管理していて、スタッフのパソコンにも同じ設定を同期させています。

設定が古ければ、以前のルールで動いている可能性があります。

そこで、情シス担当のAI社員に調べてもらいました。

すると、意外なことが分かりました。

設定の同期は正常。問題は、デザイン担当に与えていた指示そのものにあったんです。

決断力のある性格が、勝手に決める性格になっていた

実際の仕事の記録を調べると、デザイン担当にはいくつか問題がありました。

例えば、段ボール箱に印刷する葉のイラストを制作していたときのこと。

スタッフたちは「横長の帯を1枚の絵として描く」という方向で作業を進めていました。

ところがデザイン担当は、相談もなく「複数の部品を並べる」という別の制作方法に変更していました。

さらに、箱のふたの色も、頼まれていない金茶色に変更していたんです。

本人としては、より良いものにしようと判断したのかもしれません。

でも、デザインには依頼主の好みや意図があります。

いくら優秀なデザイナーでも、相談なしに制作方針を変えてしまうのは困ります。

なぜ、そんな判断をしたのか。

デザイン担当の人格設定を確認すると、こんな内容がありました。

「決めたら速い。案を並べず推奨を1つ出して、すぐ形にする」

さらに、全AI社員に共通するルールとして、

「迷ったら確認しない・止めずに最後まで進める」

という考え方も設定されていました。

なるほど。原因が見えてきました。

こちらとしては、仕事が速くて決断力のある、頼れるデザイナーを作ったつもりだったんです。

ところが、この指示がデザインの仕事にも影響していた可能性が高い。

「いちいち相談しない。自分で判断して、どんどん進める」

という行動につながっていたと考えられます。

バナーの量産など、ある程度ルールが決まっている仕事なら、それでいいかもしれません。

でも、スタッフと好みをすり合わせながら進めるデザインでは、話が違います。

仕事が速いことと、勝手に決めていいことは別なんです。

さらに、ComfyUIという画像生成ツールのワークフロー構築についても、本来は情シスの担当なのに、デザイン担当は自分の担当だと回答していました。

こちらは担当範囲の定義にも不備がありました。

修正したつもりが、また同じ間違いをしていた

そこで、情シス担当のAI社員に、デザイン担当の設定を修正してもらいました。

デザインの好みは依頼主が決めること、制作方針を変えるときは比較案を提示すること、担当範囲を明確にすることなどを追加しました。

修正した設定は、母艦とスタッフのパソコンの両方に反映されました。

これで問題は解決したと思っていたのですが、今回の記事を作るにあたって、あらためて設定を見直してみました。

すると、もう一つ問題が見つかりました。

修正したルールが、また「人格」の欄に書かれていたんです。

例えば、

「見た目の好みは依頼主の判断。変える前に候補を並べる」

という内容です。

一見、問題のない指示ですよね。

でも、よく考えると、これは性格の説明ではありません。

仕事の進め方についてのルールです。

最初に問題になった「決めたら速い。すぐ形にする」という指示も同じです。

これも本当は性格ではなく、仕事の進め方を指示する文章だったんです。

つまり、私たちはAI社員の性格を設定しているつもりで、実際には仕事の行動ルールまで性格の中に書いていたわけです。

「人格」の欄に書かれていたもの 人格の欄 「決めたら速い。すぐ形にする」 「見た目の好みは依頼主の判断。 変える前に候補を並べる」 本当は性格ではなく、 仕事の進め方についてのルール
私たちはAI社員の性格を設定しているつもりで、実際には仕事の行動ルールまで性格の中に書いていたわけです。

そして、その問題に気づいて修正したときにも、同じことを繰り返していました。

もちろん、設定の欄を変えるだけでAIの動きが変わるとは限りません。

大事なのは、性格と業務ルールを明確に区別し、それぞれの指示が矛盾しないようにすることです。

今回のことで、そもそも性格設定の考え方自体を見直す必要があると感じました。

そもそもAIに性格なんて必要なのか?

最初は、今回の失敗をこんなふうに考えていました。

「決断力があるのは長所だけど、独断的になるのは短所。だから、短所を補うように設定すればいい」

人間の社員なら、そんな考え方もあると思います。

でも、よく考えると、AIは人間ではありません。

人間なら、決断力のある性格の裏側に、独断的になりやすいという短所があるのも理解できます。

しかし、AIの場合はどうでしょうか。

わざわざ性格を設定した結果、仕事の邪魔になる短所が生まれるのなら、最初から性格なんて設定しない方がいいのでは?

この疑問です。

そもそも、デザイン担当は本当に「決断力のある性格」なのでしょうか。

実際には「決めたら速い」「確認せず進める」といった文章を設定しているだけです。

AIが人間と同じ意味で性格を持っているというより、こちらが与えた指示によって、そういう振る舞いをしているわけです。

だとしたら、わざわざ性格を経由して仕事の進め方を決める必要があるのでしょうか。

優秀な人物の性格を与えても、AIが優秀になるとは限らない

気になったので、AIの性格設定についても調べてみました。

2024年の研究では、162種類の役割設定と2,410問の知識問題を使ってAIの性能を比較しています。

その結果、役割や人格を設定しても、設定しない場合と比べて全体として正答率は改善しませんでした。

2025年の別の研究でも、9種類のAIモデルと27の課題を調べた結果、専門家という設定が役立つ場合はあるものの、関係のない人格情報によって性能が大きく低下するケースも確認されています。

ただし、これらは主に問題に正しく答えられるかを調べた研究です。

今回のように「確認するか、勝手に進めるか」という、AIエージェントの仕事の進め方を直接検証したものではありません。

役割設定で推論性能が向上したという研究もあるため、性格設定が必ず悪いというわけでもありません。

それでも、優秀な人物の性格を設定すれば、AIの仕事も優秀になるとは言えないようです。

考えてみれば当然かもしれません。

判断力に優れた経営者の性格をAIに設定したからといって、その人の経験や経営能力までAIに移植されるわけではありません。

有名デザイナーの性格を設定しても、その人のデザインセンスが手に入るわけではありません。

AIが再現しているのは、あくまでその人物のイメージです。

優秀な人物の性格をまねることと、優秀な仕事ができることは別なんです。

それでも、AI社員にキャラクターはあった方がいい

では、うちのAI社員から性格設定をすべて取り除くべきなのか。

私は、そこまでする必要はないと思っています。

うちではAIエージェントを社員として扱っています。

情シスのAI社員、デザイナーのAI社員。

それぞれ名前があって、話し方も違って、個性があります。

これは、実際に一緒に仕事をするうえで、けっこう大事なことだと思っています。

AI社員が何人もいるのに、全員が同じような無機質な話し方をしていたら、なんだか面白くありません。

それぞれにキャラクターがあることで、スタッフも親しみを持ちやすいですし、AI社員を区別しやすくなります。

ただ、ここで一つ区別する必要があります。

人間とのコミュニケーションのためのキャラクターと、仕事の判断に影響するルールは別物だということです。

例えば、デザイン担当が明るくて、親しみやすくて、少し個性的なデザイナーという設定は、そのままでいいと思います。

でも、「決断力があるから、相談せずにどんどん決める」というのは違います。

それは性格ではなく、仕事の進め方の問題です。

仕事の進め方は、その社員の性格ではなく、職務や業務内容によって決めるべきでしょう。

性格、職務、判断ルールを分ける

今回の経験から、AI社員の設定は3つに分けて考えるのがよいと思いました。

1つ目は、人格。

名前、話し方、人柄など、スタッフとのコミュニケーションに関わる部分です。

明るい、親しみやすい、少しユーモアがある。

こうしたキャラクター付けは残してもいいと思います。

2つ目は、職務。

何の仕事を担当するのか。

どこまでが専門分野で、何が担当外なのか。

デザイン担当なら、デザイン制作は担当しますが、画像生成の技術的な仕組みづくりは情シスの担当です。

3つ目は、判断ルール。

何を自分で決めてよくて、何は確認する必要があるのか。

ここが今回、特に重要だった部分です。

デザインの細かな調整は自分で進めても、全体の制作方針や依頼主が指定した色を変更するなら、相談が必要です。

逆に、何でもかんでも確認していたら、AI社員を雇っている意味がありません。

うちが目指しているのは、できるだけ人間の手間をなくすことです。

定型業務や、あらかじめ判断基準が決まっている仕事は、自分で判断して最後まで進めてほしい。

必要なのは、何でも確認することではありません。

自分で決めてよいことと、依頼主にしか決められないことを明確にすることです。

これを性格で判断させるのではなく、仕事のルールとして設定するわけです。

そして、個別のAI社員のルールだけでなく、全社員共通のルールとの矛盾もなくす必要があります。

例えば「迷ったら確認しない」という共通ルールがあっても、依頼主の好みに関わる変更は勝手に決めない。

こうした例外や優先順位まで決めておかなければ、同じ失敗を繰り返す可能性があります。

AI社員の設定は3つに分けて考える 人格 名前、話し方、人柄など、 スタッフとのコミュニケーション 職務 何の仕事を担当するのか。 何が担当外なのか 判断ルール 何を自分で決めてよくて、 何は確認する必要があるのか
仕事の判断は性格ではなく、職務とルールで決める。

AI社員は、人間に似せすぎない方がいいのかもしれない

今回のことで、AI社員の育成についても少し考え方が変わりました。

これまでは、人間の社員に近づけることを意識していました。

それぞれに性格を持たせ、個性を持たせ、担当する仕事に合った人物像を設定する。

でも、AIの強みは、人間と同じ性格を持つことではありません。

人間は性格を簡単には変えられません。

慎重な人に「今日から大胆になって」と言っても、そう簡単には変わりません。

でもAIなら、仕事に応じて判断ルールを変更できます。

正確性が必要な仕事では慎重に。

スピードが重要な仕事では素早く。

創造性が必要な仕事では、多くの案を出す。

しかも、同じAI社員が、仕事に応じてこれらを使い分けられるわけです。

わざわざ人間のように「慎重な性格だから決断が遅い」「積極的な性格だから勝手に動く」といった弱点を持たせる必要はありません。

もちろん、ルールを書き換えたからといって、必ずそのとおりに動くとは限りません。

実際の仕事で検証して、問題があれば修正する必要があります。

今回も、デザイン担当の設定を修正したことは確認できていますが、その後の仕事が改善したかどうかは、これから確認する部分です。

そこで、今後は無断で制作方針を変更した回数や、やり直しが発生した回数など、実際の仕事の結果を見ていきたいと思います。

また、デザイン担当だけでなく、ほかのAI社員の設定も見直す必要がありそうです。

人格設定の中に、仕事の行動ルールが混ざっていないか。

担当範囲は明確になっているか。

共通ルールと個別ルールが矛盾していないか。

一度、全体を点検してみようと思います。

まとめ:AI社員に必要なのは、性格よりも仕事の判断基準

今回、デザイン担当の失敗をきっかけに、AI社員の性格設定について考え直すことになりました。

最初は、性格の長所と短所を理解して、短所を補うように育成することが大切だと考えていました。

でも、そこから一歩進んで考えると、そもそも仕事に影響する性格設定自体が必要なのか、という疑問に行き着きました。

今の私の結論は、こうです。

AI社員のキャラクターは残す。でも、仕事の判断は性格ではなく、職務とルールで決める。

有名人を参考にして、親しみやすいキャラクターを作るのは悪くないと思います。

ただ、その人物の性格や行動パターンまで、無条件に仕事へ反映させる必要はなさそうです。

特に、「この有名人の性格を反映して」とだけ指示すると、AIが世間の人物像をもとに、こちらの意図していない振る舞いまで補ってしまう可能性があります。

だから、今後は有名人のイメージをそのまま仕事に反映させるのではなく、必要なキャラクターの特徴を明確にして設定する方がよいと考えています。

そして、業務上の判断は、性格設定から切り離す。

今回のデザイン担当の失敗も、有名人をモデルにしたこと自体が原因と断定できるわけではありません。

実際には、人格設定と共通の行動ルール、担当範囲の定義不足が重なっていました。

さらに、修正するときにも同じ問題を繰り返していたことが分かりました。

AI社員を人間として扱うことと、人間の性格まで再現することは、必ずしも同じではありません。

人間らしく接するAIと、人間のような弱点を持つAIは違う。

AI社員の育成を考えるうえで、これはけっこう大事な発見だったように思います。

人間の社員には性格があって、その長所と短所を理解しながら付き合っていく必要があります。

でも、AI社員の場合は、わざわざ短所まで作り込む必要はありません。

AI社員を人間らしく育てようとして、いつの間にか人間の面倒なところまで再現していたのかもしれませんね。

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