W EC AI WorksECの仕事を、AIで減らす。

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AI組織を作るなら、
元Webディレクターを採用しろ

今、AIエージェントを使って会社の仕事を自動化しようとしているEC事業者が増えています。

AIにちょっと指示して、資料を作らせたり、データを分析させたりする程度なら、それほど難しくありません。

ところが、会社の仕事をどんどんAIに任せていくと、話が変わってきます。

毎日決まった時間に仕事をさせる。複数のAI担当者を連携させる。データを共有する。失敗したら原因を調べて修正する。人間が何もしなくても安定して仕事が回るようにする。

ここまでやろうとすると、AIへの指示がうまいだけではどうにもなりません。

必要になるのが、AIを働かせるための「仕組み」です。

しかも、この仕組みを作ろうとすると、Web制作、プログラミング、データベース、サーバー、セキュリティ、業務システムなど、実に幅広い知識が求められます。

もちろん、今はAIがかなりの部分を補ってくれます。プログラムもAIが書いてくれるし、わからない技術はAIに聞けば教えてくれます。

ただ、知識がゼロだと厳しい。

そもそも何を作ればいいのか、AIにどう指示すればいいのか、できあがったものが正しいのか、安全なのか。

それが判断できません。

普通のEC運営者が、いきなりここまでやるのは、なかなか大変だと思います。

では、どんな人ならAI組織を構築できるのでしょうか。

実は、私には適任だと思っている職種があります。

Webディレクターです。

Web制作の仕事は、いろいろな専門職が集まって成り立っている

以前、私はWeb制作の仕事をしていました。

Webサイトやシステムを制作する仕事では、案件の規模によりますが、だいたい次のような職種の人たちが関わります。

  • プロデューサー
  • プロジェクトマネージャー
  • ディレクター
  • デザイナー
  • フロントエンドエンジニア
  • バックエンドエンジニア

上の方はクライアントとのやり取りや、企画、予算、プロジェクト全体の管理を担当することが多く、下の方に行くほど、具体的な制作や開発を担当する専門職になります。

クライアントとのやり取り、企画、予算、全体の管理 プロデューサー プロジェクトマネージャー ディレクター デザイナー フロントエンドエンジニア バックエンドエンジニア 具体的な制作や開発を担当する専門職
上の方は企画、予算、プロジェクト全体の管理。下の方に行くほど、具体的な制作や開発を担当する専門職になります。

もちろん、実際の役割分担は会社によって違います。

従来は、Webサイトをひとつ作るにしても、こうした人たちがそれぞれの専門知識と技術を持ち寄って仕事をしていました。

ところが、AIの登場によって、この構造が大きく変わろうとしています。

デザインも、プログラミングも、データベースの構築も、AIに任せられる範囲がどんどん広がっています。

もちろん、AIだけでは難しい仕事もありますし、専門家による確認が必要な場面もあります。

それでも、以前なら何人もの専門職が必要だった仕事を、一人の人間がAIを使って進められるようになってきました。

では、その一人には、どんな能力が必要なのでしょうか。

専門技術よりも、全体を見渡す能力

ここが重要なところです。

例えば、AIにシステムを作らせるとします。

プログラムの知識がなくても、AIに頼めば、それらしいプログラムは作ってくれます。

でも、システムを作るには、プログラムを書く以外にも考えなければいけないことがたくさんあります。

どんな機能が必要か。データをどこに保存するか。ほかのシステムとどう連携させるか。誰にどこまで操作を許可するか。エラーが起こったらどうするか。あとから機能を追加できるか。

こうしたことを考えず、ただAIに「これを作って」と指示しているだけでは、仕組みが増えるほど問題が出てきます。

AIはプログラムを作れても、会社に必要な仕組みの全体像まで、常に正しく判断してくれるわけではありません。

そこで必要なのが、幅広い知識を持ち、全体を見渡して、各工程に適切な指示を出せる人です。

これは、まさにディレクターがやってきた仕事です。

ディレクターは、何でも知っているけど、何でも作れるわけではない

制作現場におけるディレクターは、現場の責任者です。

クライアントの要望を整理して、必要な仕様を決め、デザイナーやエンジニアに指示を出す。制作途中で問題があれば調整し、できあがったものを確認する。

専門的な制作技術では、デザイナーやエンジニアの方が優れていることも多いでしょう。

ただ、ディレクターは、それぞれの専門分野について、ある程度の知識が必要です。

デザインがわからなければデザイナーに指示できないし、プログラムがまったくわからなければエンジニアとの打ち合わせもできません。

さらに、サーバーやセキュリティ、制作費用や納期についても理解しておく必要があります。

つまり、個々の技術は専門家ほど深くなくても、全体を理解し、仕事を組み立てる能力が求められる職種なのです。

これはAI組織の構築に、非常に相性がいいと思っています。

以前はデザイナーやプログラマーに出していた指示を、今度はAIに出す。

専門的な技術をAIに補ってもらいながら、全体を管理する。

仕事の進め方が、驚くほど似ています。

以前 ディレクター 指示 デザイナー プログラマー 今度は ディレクター 指示 AI 専門的な技術を補ってもらう
以前はデザイナーやプログラマーに出していた指示を、今度はAIに出す。仕事の進め方が、驚くほど似ています。

ディレクターが出世コースとは限らない

ここは、私が以前から感じていたことなのですが、ディレクターという職種は少し特殊です。

一般的には、デザイナーやプログラマーが経験を積み、ディレクターにキャリアアップするという説明をされることがあります。

実際、そういう人もいます。

ただ、私が経験した制作現場の感覚では、必ずしもそうではありませんでした。

技術を突き詰めていく人もいれば、技術の専門職としては伸び悩んで、ディレクターに回る人もいる。

むしろ、技術者としてのキャリアアップというより、違う能力を求められる仕事に移る、という印象でした。

技術力が高いからといって、現場管理がうまいとは限りません。

反対に、ものすごいプログラムを書けなくても、クライアントの要求を整理して、技術者に的確な指示を出せる人がいます。

そういう人が、ディレクターとして活躍していました。

そして、ディレクターは未経験者や経験の浅い人が補助的な仕事から入ることもできる職種です。

もちろん、優秀なディレクターには高給取りもいますし、職種全体で見れば決して給料が安い仕事ではありません。

ただ、採用の間口が比較的広く、経験や能力の差も大きい。

だからこそ、中小のEC企業でも、条件に合う人材を探す余地があるのではないかと思っています。

そんな高度な人材を採用するのに、いくらかかるの?

ここまで読むと、そんな人材を採用するのは大変だと思うかもしれません。

高度なIT人材を雇うとなれば、それなりの給与が必要になります。

でも、私が言っているのは、ものすごく優秀なプログラマーを採用しましょう、という話ではありません。

必要なのは、システムのことをある程度理解していて、専門家に指示を出せる人です。

AIがなかった時代には、実際の制作や開発を担当する専門家が必要でした。

しかし、今はAIがその仕事をかなり補ってくれます。

これまで技術力が足りず、簡単な案件しか扱えなかったディレクターでも、AIを使えば、もっと高度な仕事ができる可能性があります。

これは、今まで評価されにくかった人材が、AIによって活躍できるようになるという話でもあります。

ただし、ひとつ注意があります。

Webディレクターなら誰でもいいわけではありません。

広告やデザイン制作の進行管理だけを経験してきた人と、Webシステムの開発に関わってきた人では、持っている知識がかなり違います。

私なら、Webシステム構築の経験があり、プログラムやサーバーについて、浅くても幅広く理解しているディレクター経験者を探します。

余談ですが、制作業界からEC業界への転職は「都落ち」だった

これは少し余談ですが、私がWeb制作業界にいた頃、制作会社で働いている人たちの間には、ある種のプライドがありました。

たとえば、制作会社でデザイナーやエンジニアとして働いている人が、一般企業のWeb担当者やEC企業の制作担当者に転職する。

仕事内容はそれほど変わらない場合もあるのですが、制作業界にいる側からすると、それは一種の「都落ち」のように見られることがありました。

制作会社は、いろいろなクライアントの仕事を受け、さまざまな技術やデザインに触れることができます。

一方、EC企業に入ると、基本的には自社のサイトや業務に関わる仕事になります。

同じような仕事をしていても、制作会社の方が専門性が高く、EC企業の社内担当者になるのは一線を退くようなイメージを持つ人もいました。

もちろん、これは私が当時感じていた業界の空気の話です。今もそうなのかはわかりません。

ただ、AIの登場によって、この関係も変わってくるのではないかと思っています。

今後、AIが制作やプログラミングの仕事をさらに担うようになれば、制作業界やIT業界の雇用環境も変わっていくでしょう。

これまで専門技術を武器に仕事をしてきた人たちの中にも、仕事の減少や、求められる能力の変化によって、転職を考える人が増えてくるかもしれません。

そうなると、これまで敬遠されがちだったEC企業への転職も、選択肢になってくるのではないでしょうか。

しかも、EC企業の側も変わっています。

以前なら、社内のWeb担当者といえば、商品ページを作る、バナーを作る、サイトを更新する、といった仕事が中心でした。

ところが、これからはAIエージェントを使って、社内のさまざまな業務システムを構築し、自動化していく仕事が増えていきます。

単なるWeb担当者ではなく、会社全体のAI組織を構築する責任者です。

制作会社でいろいろな案件に携わってきた人にとっても、十分やりがいのある仕事になると思います。

これまでEC企業では採用が難しかったような人材が、AI時代には採用できるようになるかもしれません。

EC事業者にとっては、これはひとつのチャンスではないでしょうか。

優秀なエンジニアが、AI組織の責任者に向いているとは限らない

もちろん、エンジニアを採用するという選択肢もあります。

ただ、ここも注意したいところです。

エンジニアは技術の専門家です。技術を深く理解しているのは大きな強みです。

でも、優秀なエンジニアが、必ずしも優秀な現場監督とは限りません。

目の前のプログラムを完璧に作ることと、会社全体の業務を理解して、どこから自動化するべきかを考えることは、違う能力です。

一方、プロデューサーのような上流の仕事をしてきた人も、全体を見ることは得意かもしれませんが、技術面の理解が十分とは限りません。

そこで、ディレクターです。

クライアントからの無茶な注文と、現場からの「そんなの無理です」の板挟みになってきた人たち。

そんな中で、予算と納期と品質のバランスを取りながら、何とか仕事を完成させてきた。

この経験は、AIを使ううえでも役立つはずです。

AIだって、指示した通りに動かないことがあります。

間違ったものを作るし、できないと言い出すし、できたと言っていたのに実はできていなかった、なんてこともあります。

そういうときに、どう問題を整理して、どう指示を変え、どう確認するのか。

まさにディレクターの腕の見せどころではないでしょうか。

外注で全部作ってもらえばいい、という話ではない

AI組織を作ろうとして、仕組みの構築でつまずいた場合、外注を使えばいいと考える人もいるでしょう。

普通のWebシステムなら、それでもいいと思います。

要件を決めて、開発会社に作ってもらい、完成したものを納品してもらう。

ただ、AI組織は少し事情が違います。

AIそのものの進化が速く、使える技術も変わっていきます。

また、実際にAIに仕事をさせてみると、想定していなかった問題が次々と出てきます。

AI担当者を増やせば、データの共有方法や権限管理も見直さなければいけません。

新しい仕事を任せるたびに、仕組みを追加したり、修正したりする必要があります。

これを全部外注に頼っていたら、費用もかかるし、対応にも時間がかかります。

もちろん、専門的な部分は外注すればいいと思います。高度なセキュリティ対策など、無理に社内だけで完結させる必要はありません。

ただ、社内にAI組織の全体像を理解していて、自分たちで改善を進められる人は必要だと思います。

専任者でなくても構いません。最初は兼任でもいいでしょう。

大事なのは、AI組織の仕組みを外部に丸投げしないことです。

採用するなら、こんな質問をしてみたい

もし私がAI組織を作るための人材を採用するとしたら、面接でこんな質問をすると思います。

「うちのECの注文データと売上データを毎日自動で取得して、集計して、異常があれば通知する仕組みをAIに作らせたい。どう進めますか?」

ここで、いきなりプログラムの話を始める人より、まず現在の業務やシステムについて質問してくる人の方が、私には頼もしく感じます。

どこのデータを使うのか。すでに使っている仕組みはないのか。異常とは何を指すのか。エラーが起こったときはどうするのか。

こうしたことを確認してから、どういう仕組みが必要なのか整理できる人。

そして、その仕組みをAIに作らせて、できあがったものが正しいか確認できる人。

技術的な細かい部分は、AIに聞きながら進めても構いません。

ただし、自分が理解していない部分を理解したふりをせず、必要なら専門家に確認できることも重要です。

AIに仕事をさせる能力とは、AIにうまく命令する能力だけではありません。何を作るべきかを判断し、完成したものの品質を確認できる能力です。

実は、私自身が元ディレクターでした

ここまで書いておいてなんですが、私自身、以前Web制作の仕事をしていたときは、ディレクターがメインの業務でした。

小さな案件では、クライアントと直接打ち合わせをして、予算を決め、制作も自分でやることがありました。

デザインもプログラムもサーバーも、ある程度は理解しています。

ただ、どれも専門の技術者にはかないません。

制作会社にいた頃なら、それぞれの専門家にお願いしていた仕事です。

ところが今は、その多くをAIに頼めるようになりました。

自分が何を作りたいのか、どんな仕組みが必要なのか、何を確認しなければいけないのか。

そういう全体像がある程度わかるので、あとはAIに作らせながら、仕組みを組み立てていくことができます。

今、私が自分の会社のAI組織を構築できているのも、過去のディレクター経験が大きく役立っているのではないかと思っています。

もちろん、ディレクターなら誰でもできるとは思いません。

技術の理解だけでなく、会社の業務を理解する能力や、AIを使って試行錯誤する姿勢も必要です。

それでも、今までの職業経験がこんな形で役に立つとは、当時は思ってもいませんでした。

AIの登場によって、専門技術を持っている人の価値がなくなるわけではありません。

ただ、専門家に仕事を任せて、全体を管理する能力の価値が、これまで以上に高くなるのではないでしょうか。

AI組織を作りたいけれど、自分には技術的な知識がない。かといって、高度なエンジニアを何人も雇う余裕はない。

そんなEC事業者には、元Webディレクターという人材を、一度検討してみてほしいと思います。

特に、システム構築の現場を知っていて、AIを使って自分でも仕組みを作ってみようという意欲のある人。

そういう人が一人いるだけで、会社のAI活用は大きく変わる可能性があります。

これからのAI時代、会社に必要なのは、すべてを自分で作れる人よりも、AIに作らせるものを判断できる人なのかもしれません。

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